豆本(まめほん)
昨年、『豆本講座』と名付けたワークショップを開催した時のことである。いくつか問合せがあった中に、“豆本”ってなんですか、という質問が一人の女性からあった。
もともと愛好家のために作られることが多い“豆本”だが、その中身はと言えば、エッセイ・詩集の類から料理レシピにいたるまで、実に多種多様である。
このようなことを説明する私も大変だが、質問してきた女性はもっと大変である。
「面白そうですね。ところで、ワークショップはご主人が先生ですか?」
「いやいや私にはとても……。講師は大阪から、“おまめさん”と呼ばれている女性の方に来ていただきます」
「エーッ、おまめさん、ですか、ウソー!」
とにもかくにも、話はなかなかワークショップの中身まで行き着かないのである。
「本にするものを持っていけばいいかしら」
「今回は、“豆本”の基本を学ぶだけなので、お好きな“豆本”作りは後になります」
さて、ワークショップ当日である。小柄なおまめさんこと柴田さんが大きな袋を抱えて現れ、中から“豆本”に使うと思われる紙類はともかくとして、針金や金槌までが出て来るとは参加者のみならず、この私も驚いた。
かくして二時間の講習も無事終わり、かの女性の手のひらに可愛い“豆本”が一冊載っていたのは言うまでもない。
「味のある“豆本”を店の本棚に並べようと思うのだが……」
と、配偶者に話したことがある。
「そうね、あの時のみんなの“豆本”、可愛くてよかったわね。でもカフェだと目立たないから、“豆本”の代わりに“豆ダイヤ”を私の耳につけるというのはどうかしら」
以来、我が家で“豆本”の話はしたことがない。
まめほん【豆本】①(携帯用に便利なように作った)小型の本。②(愛好家だけに頒布する)装丁に善美を凝らした超小型の本。<新明解国語辞典>