器としての本

たいへんな愛書家であるお客様から、最近上梓された著書を一冊いただいた。

本を手にとって開いたときの感触がとても心地よいので驚いた。布装ということだけではない。限定230部で、とても丁寧に作られたのであろう。

ふだん手にする本と何が違うのか、ちょうど手元にあったほぼ新品の本数冊と比べてみた。まず背の丸みの具合が絶妙である。それにページの開きがなんともなめらかである。表紙は、ミゾの幅が微妙に広く、これが開きやすさにつながっている。そして、本体のページには既に開きグセがゆるやかにつけてあるようだ。これは大部数発行される本にはみられず、そのためその本を開いてみるとギシギシするような感覚がある(それが自分のなかで「新品」という感覚に置き換わっていることに気がついた)。

一概に「本」といっても千差万別。使い捨てのように扱われるものから特装愛蔵本までみな「本」である。書かれている内容が料理ならば、装本は器のようなものだ。まず器で楽しませていただいた。これから料理をじっくりと味わうことにしよう。

コメントを残す