(以下はすでに廃刊になった地域無料紙に発表した記事の再録。ホンの一寸語句などを訂正。ちなみに廃刊案内は直接聞いておらず、噂で聞いたのみ。もし関係者ご覧になったらいつでも連絡下さい。それではどうぞ。)
「忘れ果てられた、こないだ―地域ふるほん・ふるほん地域 1」
●「コーヒーのみあるきマップ」『おあしす』81号、1976年8月 (金沢百選会) 66p 4,000円
読者のみなさま、秋も深まる中、もうお忘れかもしれませんが今年の夏はいささか暑かったようにも思います。そんなこの夏に扱ったふるほんより。
月初頭真夏日、「ふるほんがあるので、引取りに来て欲しい。」との電話を受けました。うだるような暑さにやや弱気になりながらも、どんなふるほんに出会えるかと急いで出かける現金さ。お伺いしたお宅は、玄関入り口前に看板があがる、お花のお師匠邸。何でも、他の古書店にも連絡をしたが文庫や雑誌ばかりなので、断られたとの由。ふるほんや若手・新参者・後発参入組の私は、当市の職業別電話帳『タウンページ』をご覧いただければおわかりのように、書籍・雑誌はもちろんのこと、あらゆる紙モノ資料の買取りを歓迎いたしている旨の案内を掲出。お花のお師匠は、この広告を見て、「もう最後のつもり」と弊店に依頼したようです、ありがたい。
午後2時、気温35度、すでにふるほんは玄関前に並べられ、サンサンと太陽を浴びている。ここ10年ぐらいの生け花関係の雑誌、カバーのない「裸」文庫など500冊くらいが白日の下にさらされている。ウ~ン、これはいかんともしがたい……。やはり他の古書店のように引取り出張のハードルをきっちり、かしこく設定せねばならぬのだろうか……。真夏炎天下、私は何をやっているのだろうか……、暑さと想念でクラクラしているそんな時、生け花雑誌の下敷きになっていた、1970年代地域ミニコミタウン誌『おあしす』のかたまりをおりしも発見。ああ、救われた。
さてそのうち、「コーヒーのみあるきマップ」という特集号の『おあしす』81号をご案内します。その内容は「一杯のコーヒーから……―金沢の喫茶店盛衰記―」という歴史をさぐる記事にはじまり、1976年当時の各喫茶店マッチラベル、所在地図、ブレンドの値段や名前の由来について聞くアンケートというものです。30年近く前の喫茶店マッチラベルは眺めているだけでも楽しいものです。
この『おあしす』は、何か町を歩いて歩いて作られた誌面となっているように感じます。町を散歩すること、ブラリと喫茶店に入ることが日常だった時代の雑誌といえます。
2004年秋、地域雑誌『■』創刊号、寄稿の光栄に浴することができた弊店。その弊店がこの夏、誌歴を今も重ねる「先輩」誌『おあしす』に出会ったのは、これ何かの書縁かもしれぬ、と今にしてふと思う。